整備売上でディーラーがトップに
2年連続で専・兼業から奪取する
日整連は、このほど自動車整備業の経営実態をまとめ発表した。それによると、整備売上高で長年トップに君臨してきた整備専業・兼業工場から、ディーラー工場が初めて2年連続でトップを奪い、今後の整備売上チャンピオンがディーラーに移ったことを示した。
平成31年度の整備売上高は5兆6,216億円となり、前年度に比べ921億円増で3年連続の増加だったとしている。直近6年間の推移でみると、平成28年度を底に、29年度から増加に転じ、整備業主役がディーラーに移ったことを確実にした。工場数でみると26年度の専・兼業が72,224工場、ディーラーが16,179工場から、専・兼業は490工場減、同じ時期にディーラーは170工場増加。一方、整備要員一人当たりの年間整備売上高では、専・兼業が10,331千円から9,963千円、ディーラー21,905千円から23,635千円となっている。つまり、ディーラーが間断なく生産性を挙げる努力をしてきたことがトップを奪う真の対策だったことを表していた。
特定整備制度4月1日スタート
大変革を迫られ整備業界が激震
自動車整備業がいま大激震に見舞われている。震源は、整備業が自分たちの存在根拠としてきた「分解整備」の規定が消滅し、4月1日から「特定整備」となる、と規定されたからである。何が変わるのか、どうしなければならないのか、整備業者はどう動くのか。わかる範囲でまとめてお知らせいたします。
「分解整備」から「特定整備」時代へ
現行の分解整備は、自動車の装置を7種類(原動機、動力、走行、操縦、制動,緩衝、連結装置など)に分け、それら装置を取り外して行う整備・改造が対象であり、それを繰り返し行う事業者を運輸局長が「認証」し、誕生したのが自動車分解整備事業者である。昭和26年の道路運送車両法の施行からだから、ほぼ70年金科玉条としてきた事業根拠でもあった。
ところが、最近の先進技術に係る整備・改造の大部分は、分解整備の範疇からは外れており、未認証の事業者でも作業が行われている。このままでは自動運転車などの安全性が確保されないため、分解整備の範囲を拡大する車両法の一部改正を経て、4月1日施行することとなったものである。
具体的には、緊急自動ブレーキやレーンキープアシストなどの先進運転支援技術、今後の自動運転車に装着されるカメラ、レーダーなどの装置の整備や改造を「自動運行装置」として追加、いままでの「分解整備」から「特定整備」に改めたものである。
何が変わるのか
センサーが装着されたフロントバンパー、グリル、フロントガラスの脱着、交換作業に加えて、先進安全技術の構成作業(エーミング、キャリブレーション)が新たに必要な対象作業となるため、いままでは認証の対象外だった板金塗装業、フロントガラス交換業、電装整備業、自動車用品販売業など周辺事業者にも、電子制御装置整備認証の取得が広がる可能性でてくることになった。
そこで、特定整備の対象作業を難易度の高い次の三つの電子制御装置整備作業とし、いずれの作業する場合も、認証取得が必要と規定している。
1)自動運行装置の取り外しや作動に影響を及ぼすおそれがある整備・改造
2)衝突被害軽減制動制御装置(自動ブレーキ等)、自動命令型操舵機能(レーンキープに用いられる、前方をセンシングするカメラ等の取り外しや機能調整
3)前2項に係るカメラ、レーダーが取り付けられている車体前部(バンパ、グリル)、窓ガラ
スの脱着
認証の種類は 3パターン
①分解整備のみ行うパターン
- の分解整備のみなら、認証基準は従来と同じで追加する機器、技術はないが、電子制御装置等の整備・改造作業には手がつけられない。そのため、先進技術装置車が大半走行する数年先には、整備工場を維持できなくなると見られています。
②電子制御装置整備のみ行うパターン
- の電子制御装置整備だけの認証工場は、今後板金工場、電装整備工場、ガラス販売業などに認証取得が広がり、既存の整備事業者、カーディラーとの連携で経営できると見られています。
③上記の両整備を行うパターン
- の両方を持つ認証工場は、指定整備工場やディーラーが目指すとみられ、業界内で共用型の連携がすすむと予測されている
以上の3パターンともに、自動車特定整備事業者となり、認証を取得する必要があります。
整備業はどう動くのか
岐阜県自動車整備振興会が、「特定整備」で事業者アンケートを行い、結果を発表している。それを見ると、電子制御装置認証の取得意向を聞いた結果では、「すぐ取得する27%、「点検基準改正まで」34%、「不明」39%と、決めかねている状況が出ている。また、「エーミングを行ったことがあるか」では、「なし」が圧倒的に多く73%、「あり」が22%でディーラー工場だけとなっている。
こうした状況から、一部の整備事業者からは「この機会に廃業する」と考えている事業者が少なくない、との観測も聞かれた。
国土交通省からは、「整備業者に大きな負担をかけないようにしたい」など配慮する意見も聞かれるものの、整備業界には大きな試練と、一方ではチャンスの二面が待ち受けている